ビタミンD過剰症と欠乏症は厄介,ビタミンDを多く含む食品
ビタミン D というのは、実に厄介なビタミンである。
山陰、北陸、東北、北海道など、
冬のあいだ日光に恵まれない地方に多い”くる病”が、
ビタミン D の欠乏症である。
これは、ビタミンDが植物性食品には全く含まれておらず、
ごく一部の動物性食品やシイタケにしか
含まれていないからである。
普段、食品中のビタミン D だけでは、
なかなか所要量を満たすことは難しい。
このため、 デヒドロコレステリン、エルゴステリン
という物質(ビタミンDの前駆物質)が皮膚の表面に分泌され、
これが紫外線の照射を受けてビタミン D になり、
再び吸収されて不足分を補っているのである。
ビタミン D の主要な働きとして、
カルシウムやリンの小腸からの吸収を助け、
骨や歯の発育を促進するといった作用がある。
食品からとり込まれ、小腸から吸収されたビタミンDは、
皮膚、脳、骨、脾臓などに分布され、
一部は肝臓に貯蔵される。
また胆汁が加わることで、
腸からの吸収が良くなることもわかっている。
ビタミン D の必要量は、男女とも0~6歳で1日400IU、
6歳以上で1日100IUとされている。
(1UIは0.3マイクログラム)
ビタミン D 欠乏症
ビタミン D欠乏症の代表的なものが、
くる病であることは最初に述べたとおり。
これはビタミン D の不足によって、
カルシウムとリンの代謝障害が起こり、
骨の石灰化に異常が生じ、骨の成長が悪化する病気である。
通常、紫外線の少ない所で生活する人とか、
ビタミン D の欠乏した食品をとっている人に多発する。
日本では先にあげた地方に多く、
年齢的には生後3ヶ月から3年までの、
特に人工栄養児に多いとされている。
症状としては貧血、不機嫌、
顔色が蒼白で顔に汗をかいていることが多く、
肋骨の一部が数珠玉のように膨れ上がっており、
歯の生え方も遅く、頭蓋骨の合わせ目が
いつまでも柔らかいままになっている。
また、毛足の骨が曲がって
O 脚(左右の膝頭が外側に弯曲している)や
X 脚(左右の膝頭が内側に弯曲している)の
症状がみられる幼児もある。
治療法としては、ビタミン D を
大量(一日に1500~5000IU)に与えることによって、
効果がでることがあるといわれている。
人工栄養児は、ビタミン D が不足がちになるので、
摂取することが大切である。
ビタミン D を多く含む食品と過剰症
ビタミン D を多く含む食品には、
肝油をはじめ、タマゴの黄身、牛乳、バター、
魚肉(イワシ、サンマ、サバ、カツオ、ブリ)、
生シイタケなどがある。
また、ビタミン D にも過剰症がある。
必要量の500~1000倍くらいを連続的に摂取していると
吐き気、食欲不振、下痢を引き起こし、
また、大動脈や心臓、腎臓などに
カルシウムが異常に沈着することがあるため、
これらの内臓器官にいろいろな障害が生じる。
ビタミン D の過剰症は、
他のビタミン過剰症に比べ最も深刻なものなので、
毎日魚を食べている人で尿が濁ったら、
すぐに医師の診察を受けるようにしたい。