ビタミンAを多く含む食品の過剰摂取が招く過剰症
ビタミン A の存在は、古代エジプトの時代から、
夜盲症(とり目)に効くとして知られていたといわれるが、
医学史上に登場したのは1913年のことである。
米国のウィスコンシン大学のマッカラム博士が助手時代に、
牛のエサの中に動物の成長因子があり、
これを脂肪に溶けるA因子と、水に溶けるB因子に分類した。
そして脂肪に溶ける最初に発見された因子ということで、
ビタミン A と命名された。
それ以来、発見の順にB、C、D・・・と命名されている。
このようにビタミンAは、歴史的にはビタミンの元祖といえる。
ビタミンAとカロチンの違い
ビタミン A は、動物性食品では
最初からビタミン A として存在しているが、
植物性食品にはカロチンとよばれる物質として存在し、
これが体内に取り込まれることでビタミン A に変化する。
ビタミン A の働きとして、動物の成長を促進し、
皮膚や粘膜組織を保護し、
視力を正常に保つといった作用がある。
カロチンは小腸の上皮細胞でビタミンAとなって吸収されるが、
カロチンの吸収は悪く、
その吸収率は食物に含まれるカロチンの30~40%で、
一般にビタミン A の3分の1とされている。
しかし、胆汁や脂肪が存在すると吸収率がよくなり、
その大部分は肝臓に蓄えられる。
肝臓に蓄えられたビタミン A は、
RBP(レチノール結合タンパク)という
特殊なタンパク質によって、体内の各組織に運ばれる。
したがって、ビタミン A やカロチンは、
脂肪やタンパク質といっしょにとると、
効率もよくなるというわけである。
ビタミン A過剰症の症状
いま私たちの生活において、普通の食事をとっていれば、
ビタミン A 欠乏症を心配する必要はない。
それよりむしろ、取り過ぎからくる
ビタミン A過剰症のほうが問題である。
ビタミン A は、水に溶ける B や C と違って脂溶性のため、
摂取しすぎると体内に蓄積される。
なので長期にわたってビタミンAを大量に摂取していると、
体がだるくなる、眠くなる、イライラする、
ひどくなると頭痛・吐き気がする、といわれている。
ビタミンAやカロチンを多く含む食品
動物性食品:
牛や豚のレバー、ウナギ、タマゴの黄身、バター、チーズなど
植物性食品:
ニンジン、ホウレン草、大根やカブやシソの葉、ネギ(緑の部分)、
カボチャ、ミツバ、ピーマン、パセリ、海苔など
ビタミン A の成人一日当たりの必要量は、
男子2000IU、女子1800IUである。
(1IUは、0.3マイクログラム)
なお、ビタミン A の一部をカロチンで摂取する場合は、
カロチン3IUがビタミンAの1IUに相当するとされているが、
具体的な数値は示されていない。
これは、カロチンは調理方法によって、
その吸収率が大きく変動するためであろう。
また同じ野菜でも、季節はずれのハウス栽培ものは、
露地のものに比べ、
各ビタミンの含有量は半分以下といわれている。
こうなると、栄養素の含有量計算はますます難しくなってくる。
なお、ビタミン A を50000IU 以上、
これを長期にわたって摂取し続けると、
過剰症になるといわれているが、
カロチンの場合にはには過剰症が存在しない。
ミカンなどを一度に大量に食べると、
皮膚が黄色くなることがあるが、
これは一過性のものなので心配はない。