野菜に含まれるリノール酸/αリノレン酸バランス
植物はリノール酸もαリノレン酸も作ることができるが、
植物によってリノール酸とαリノレン酸の含有量は異なっている。
一般に南方系野菜より北方系野菜の方が、
αリノレン酸含有量が高い。
また、温度によっても2つの脂肪酸の比率が変わってくる。
温度が低いほど、αリノレン酸を多く作る。
リノール酸よりもαリノレン酸の方が
二重結合がひとつ多いので融点が低く、
これが低温の環境に必要なのだろう。
一般に低温の環境に適応している植物は、
二重結合が多い脂肪酸をたくさん作る。
このことは冬野菜と夏野菜の脂肪酸を、
比較してみるとよくわかる。
冬野菜の方が一般にαリノレン酸が多い。
また同じ植物でも栽培温度によって、
リノール酸とαリノレン酸の割合が変わってくる。
例えば、市販のカイワレ大根を高温と低温で育ててみると、
低温の方がαリノレン酸を多く含むことになる。
以上のことは、私たちのこれからの食生活にも
重要な意味を持っている。
ほとんどの人が自給自足的に冬野菜を作り、
それを漬物などにして大量に食べていた頃は、
野菜に含まれるαリノレン酸をかなり摂取していたと思われる。
しかし温室野菜が増え、また暖かい地方や国で作られた野菜が
冬の食卓を占拠するようになると、
相対的にαリノレン酸の摂取量が少なくなってくると思われる。
とはいえ、夏野菜でもリノール酸/αリノレン酸バランスは
鳥獣肉類よりははるかに良いので、
とりあえず野菜の脂肪酸はすべて良いと考えられる。
ただ残念なことに、野菜類の脂肪酸含有量はかなり少ない。
現在の油類、肉類の多い食生活を改めない限り、
いくら野菜を食べても油類、肉類に含まれる
リノール酸系列に打ち消され、
ほとんど意味がないことを頭に入れておく必要がある。
野菜のよさを活かす主婦の気配り
日本人も肉類をほとんど食べなかった頃は、
野菜類をかなりたくさん食べていた。
漬物のほかに味噌汁にも葉類、
根類がたくさん入っていたのである。
野菜類の脂肪酸組成をみると、
一般にαリノレン酸に富んでいて、質的にはかなり良い。
ところが、残念ながらそれらの脂肪含有量は少なく、
現在のようにリノール酸摂取量の多い状態では、
野菜のαリノレン酸の効果はほとんど打ち消されているのは、
先に述べたとおり。
この野菜類に、
リノール酸の多いマヨネーズやドレッシングをかけると、
ますますαリノレン酸の効果は消えてしまう。
そんな中、αリノレン酸の多いマヨネーズ類が登場しているが、
これは大いに使うようにしたい。
ただし、総カロリーの20%程度という上限をお忘れなく。
また野菜類のαリノレン酸は、煮ても壊れない。
したがって、生野菜で食べるよりは、
煮て食べると量を多くとれるだろう。
電子レンジにかけても食べやすい形になるので、
子供てもたくさん食べることができる。
脂肪酸の問題以外にも、
野菜類の食物繊維は健康に良い。
野菜を煮ると、ビタミン C が壊れて
減ってしまうという話は本当だが、
果物なども豊富になったので、
ビタミン C 不足になることはないだろう。
「野菜サラダはヘルシーメニューである」
と考えるのは良いことだが、
何で味つけをするかによって逆に不健康メニューに
なってしまうということを知っておく必要がある。