トランス脂肪酸は有害、4タイプのマーガリンを解剖
ヘルシーメニューを頭に描いてみると、
必ず野菜サラダが出てくることだろう。
しかし、生野菜はそのままでは口当たりが悪く、
多くは食べられない。
特に子供たちは一般に生野菜が苦手である。
そこでよく、サラダにマヨネーズをかけて
食べやすいようにする。
野菜サラダやポテトやゆで卵にいたるまで、
マヨネーズはよく合うのだが、
このマヨネーズの7割は油であることはご存知だろうか。
また、サラダにドレッシングをかける人も多いと思うが、
ドレッシングにしても水分を除けばほとんど油である。
これらに使われている原料は大豆油や卵など、
どれをとってもαリノレン酸/リノール酸比の低いものばかりである。
そして、これらがリノール酸摂取量を
押し上げている主役であると言っても過言ではない。
かつてあるテレビ番組で、「マーガリンが健康食品だ」
というような取り上げ方がされていた。
おそらくバターよりコレステロールが少ないので、
健康に良いという意味だったのだろう。
ホテルで洋式の朝食をとると、
たっぷりとマーガリンをぬったトーストが出る場合がある。
パン食が増えると、やはりマーガリンがよく使われる。
ジャムは甘いためか、太ることを気にする女性が、
ジャムよりマーガリンを好むという不思議な話も珍しくない。
現在、マーガリンほど
栄養学的に多様な問題を含んでいるものはない。
4タイプのマーガリン
主原料に基づいて、
マーガリンを4つのタイプに分けて考えてみる。
タイプ①
植物油を部分的に水素添加して得られる
「水素植物油」を主原料とするもの。
タイプ②
主に業務用として使われ、
水素添加した魚油を主原料とするもの。
タイプ③
製法を改良し、植物油そのものを主原料としているもの。
(特にリノール酸含有量の高いものが多い)
タイプ④
タイプ③と似た製法によるが、αリノレン酸含有量の高いもの。
タイプ①:トランス脂肪酸型のマーガリン
タイプ①の問題点を考えてみる。
植物油は一般的にリノール酸が多いので、
常温で液体の状態である。
これをマーガリンにするには、固くする必要がある。
そこで、リノール酸の二重結合のところに水素を付加すると、
飽和脂肪酸になることで固くなる。
ところが完全に水素を付加してしまうと、
固くなりすぎて食用には使えないので、
部分的に水素添加して、
ちょうどよい固さのところで反応を止める。
すると二重結合が1個残るのだが、
二重結合の形が変わってしまう。
普通の脂肪酸の二重結合はシス型というが、
部分水素の結果残るものはトランス型というものになる。
このような天然にない脂肪酸から作られているのが、
タイプ①のマーガリンなのである。
この水素植物油は、
他にもコーヒー用のミルクやケーキなど、
多様な用途に使われており、
先進国ではその消費量がうなぎのぼりに増えている。
トランス型脂肪酸をたくさん摂取しても、
健康に影響を与えないかどうか、
という点は学会での長いあいだの争点で、
今だに決着がついていない。
そんな中ドイツでは、「疑わしきは使用せず」の考えから、
トランス型脂肪酸を含まないマーガリンに切り替えている。
しかし日本ではまだ結論が出ておらず、
問題なしとする論文も出されている。
しかしこの論文では、
せいぜい1ヶ月くらいの投与で脂肪酸分析をして、
大きな影響がないと結論したものであり、
とうてい安全性確認したものではない。
脂肪の栄養の問題は、
あくまで長期摂取の影響を評価しなければならない。
長期に摂取させて予期される慢性疾患が増減するか、
あるいは寿命に及ぼす影響はどうか、
というような長期の動物実験が必須なのである。
1億の民の健康を左右する重要な問題に対して、
わずか1ヶ月の投与実験では、あまりにも無責任すぎる。
なので現状では、このタイプのマーガリンの摂取量は、
なるべく少なくした方がよいと考えられる。
タイプ②:業務用マーガリン
タイプ②のマーガリンは魚油マーガリンとよばれるが、
スーパーなどには出てこない。
業務用としてホテル、レストランといった店舗で使われる。
この魚油マーガリンにはトランス型ということ以外に、
もうひとつの問題が加わる。
魚油はEPAのほか、DHAを多量に含んでいる。
これを水素添加すると、
長鎖オリゴエン酸がたくさん出来上がってしまい、
問題が発生する。
心臓に蓄積して心臓疾患の原因になるかもしれず、
あるいは、ペルオキシゾーンムという細胞内小器官を誘導して、
活性酸素を増やすかもしれないのである。
ただし、これらはまだ完全に証明されてわけではない。
それに、必須脂肪酸バランスの問題よりは、
はるかに影響が少ないだろうと思われる。
これらは、飽和および一価不飽和脂肪酸と同様、
摂取過剰が最大の問題であろう。
タイプ③:一番有害なマーガリン
タイプ③のマーガリンは、
まさにリノール酸信仰によって生まれたものである。
リノール酸が63%もそのままの形で含まれているのに、
液状ではなくマーガリンの固形状をしているのは驚きである。
これほど油脂業界の技術は高いのである。
確かにこのようなマーガリンは、
血漿コレステロールを下げるのに有効であろう。
しかし残念なことに、”血栓性を上げるとか発ガン性を上げる”
という副作用があることがわかったのだ。
さらにリノール酸の摂取量を増やすことによって、
多くの慢性疾患の症状を重くし、
発症率を上げる結果となることは以前述べた通りである。
この種のマーガリンが、
現在のような食事では栄養的に一番悪いといえる。
直ちに脂肪酸組成を、
タイプ④のように変えてほしいものである。
タイプ④:一番安全なマーガリン
タイプ④はタイプ③マーガリンの製法に従って、
αリノレン酸の多い食用油から作ったものである。
栄養的には最もすぐれている。
十分使用に耐えるくらい酸化に対する安定性を持っているが、
まだあまり広まっていない。
適当な価格で簡単に入手できるようになってほしいものである。